ゴナと新ゴについて思う今の自分の気持ちまとめ

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*この日記は、前blogからのサルベージ記事です。
*2012/10/10に書きました。

*比較画像など、時々同じ文字列のものを見つけ次第追加しています。
*他にも随時多少加筆修正しています。

*これは写研のいちファンが個人的に気持ちを書きとめている日記です。
*あくまでわたしの「好き」「嫌い」だけを基準に書いている日記です。
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ゴナとは、新ゴとは

ゴナとは、写研から発表された、
ちょっと丸みががっているけどしっかりどっしりとした印象の、
ゴシック書体のことです。

新ゴとは、モリサワから発表された、
同様の印象のゴシック書体のことです。

わたしは最初、その二つが違うものだなんて知りませんでした。
手書き風だとか、ハネがあるとか、そういう絵面での違いがあるなら簡単に判別可能ですが、
そういう違いのないゴシックがいくつかの会社から出されていたとして
それをそれぞれ違う書体だと認識することさえしていませんでした。
いちいちゴシック体の名前なんて知らないっていうくらい、無頓着でいました。

ですが、ゴナと新ゴは似て非なるものだと知りました。

ゴナと新ゴの一例

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

児童書「しんかんせん」で使われている【新ゴ】
Amazon: しんかんせん

(1999年11月)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)

ゴナ(写研)

新ゴ(モリサワ)


前置き

書体やデザインに詳しい人は、こんなこと説明されなくても当然知ってることだと思いますし、
わたしなんかがこんなことを書くのも
誤った知識とか足りてない知識とかがたくさんで
お恥ずかしいのですが、そういうことばかり気にしてても勉強にならないと気付いたので、
とにかくわたしが知ったことを、自分のために記録します。

ある日気付いた

なんかおかしいな、と思ったのは、ジャンプの書体が変わったことでした。
DTP化による書体変更で、
今まで使われてきた書体と違うものが使われるようになってしまった中で、
「雰囲気は今までと同じだけど、まったく同じ書体がないから、似た雰囲気の書体をあててるのかな」
みたいなのはすぐにわかりました。
例えばイナクズレ→コミックミステリみたいなやつです。
こういうのはもう明らかに形が違うのでわかりましたし、落胆しました。
イナクズレはぬ~べ~でたくさん見たので、やっぱりジャンプで見ていたかったです。

でも、そういう、「形が明らかに違うんじゃないやつ」は何が何に変わったのかとかはあまり分からず、
あまり気にしてませんでした。
今もちゃんとわかってはいないんですが、
通常の台詞のアンチック書体(明朝のかな+ゴシックの漢字)なんかは
何が使われてるかはわかりません。
かなの部分がDTP化以前に比べて太いし汚い感じがするな、とは思うんですけど…
こういうのはちょっと違和感を感じてもあまり気にせず、なんとなく読めてました。

でも、強調する言葉や叫ぶ言葉なんかにあてられる太いゴシックについて、
ある日突然強烈な違和感を感じてすごく気になるようになりました。
なんかおかしいぞ、何か違和感がある、変な気がする、なんでだろう…?!
と気になったのが、最初に「新ゴ」を意識したきっかけでした。

ジャンプの書体を調べているブログなどを読んで、それで初めてわかりました。
・今まで自分が漫画で見ていた太いゴシック体は「ゴナ」という名前だということ
・「ゴナ」は写研という会社が作っている「書体」であるということ
・「フォントファイル」ではないということ
・写研は「パソコンで使える書体」=「フォントファイル」を販売していないということ
・「ゴナ」は「写植機」で出力できる文字だということ
・漫画出版会社が写植機を使うのをやめたら、ゴナは見れなくなってしまうこと
・そんなゴナに「似ている」とされていて、パソコンで手軽に使うことができる書体が、モリサワの「新ゴ」であること
などを。

(※2021年注:いずれも当時の話です。最後に触れますが、今後フォントファイル化されますし、今後の状況は変わります)

初めて気付いたのは「な」と「る」がきっかけ

三画目と四画目が繋がってる「な」。
これが、なんかおかしいな?って思ったんです。
違和感を覚えない漫画の字と見比べてみて初めて分かりました。
ゴナの「な」は水平、新ゴの「な」はちょっと右上がりです。

あと、「る」の右から左下に向けて書く斜線。
なんかバランスがおかしいな、って…。
これも見比べて分かりました。
新ゴの方は長いんですよ。
長いっていうか角度が違う。角度が急なんです。
そしてゴナの「る」に比べて、斜線が行き過ぎてる感じがあります。

ゴナから新ゴに変えられた文字列を見ていると、
こういう線と角度の差が、わずかな差なのに、
それがたくさんの文字になって並ぶとわずかではなくとてつもない違和感になって感じるようになりました。
今まで安心して見れてたものが
いつのまにかおかしなものに差し替えられたような感じがして、
すごく気持ち悪くなってしまいました。

ゴナが好きだと気付いた、新ゴが大嫌いだと気付いた

そうか、自分はゴナが好きだったんだ…。

そして新ゴはどうしようもなく嫌いなんだということが分かりました。

慣れればそんな嫌悪感もなくなるかも、って最初は思いましたが、
いやいやそんなことはなく、
一度違和感に気付いて違和感の原因が分かってしまったので、
以降はその違いを見過ごすことはできなくなり、
嫌悪感は増していくばかりでした。

なぜゴナが好きなのか、はっきり答えることはできません。
自分でも、今でも、その理由がよくわからないんです。
長い間見続けてきたからとか、そういうことなんだと思いますが…。

なぜ新ゴが嫌いなのかは言えます。
ゴナに似ているけど、端々が違う。違うけど明らかに似ている。
そういうものを押し付けられるのは嫌です。

「似てるけど違いなんてどうせわからないよね?
言わなきゃわからないだろうし、言ってもわからないでしょ?
ならこっちでもいいよね」
というのは書体に限らず嫌いな発想です。
名前を変えて作品を発表するとか、
よく似た二つを名前を隠して提供して目利きをさせるとか。
新ゴには、そういうのと同じようなことをされたように感じました。
人を試してくる感じがあるんですよ。

気付いたら世界は新ゴだらけだった

写研はまだデジタルフォントを販売していないから
現在わたしのような個人がゴナを買うこともできないし
DTPデザイナーさんが買うこともできません。
パソコンではなく、写植機という機械を通さないと出力できません。
(※2021年注:当時の話です。今後変わります)

一方、モリサワはデジタルフォントの販売に力を入れている上に
「モリサワパスポート」といって、年間 49,800円(税抜) を支払うことで
モリサワパスポート内で定められているフォントのすべてを
印刷・DTP・放送などで自由に利用することができます。
新ゴもその中に入っているので、使用する敷居はたいへん低いです。
そのため、新ゴは多くの人に使われることになり、
街のどこからも新ゴを目にしないで済む場所はなくなりました。

絶望しました。
今まで気付かないで見て暮らしていた自分の鈍感さも恥ずかしいですが、
一旦気付いてしまって、あとはもう嫌悪感しか募らず、
かといって逃げることもできないこの世界に。

ジャンプで新ゴ。マガジンで新ゴ。
買ったジュースの成分紹介も新ゴ。
駅も新ゴ。
映画の字幕も新ゴ。
自分は俳優さんの声はそのままで楽しみたいので洋画は字幕派でしたが、初めて吹替派への転向を考えました。

幸い、今自分が勤めている会社あまり多くのフォントを扱う仕事じゃないので
勤務中は新ゴをほとんど見ないでも大丈夫というのがせめてもの救いです。

ゴナは今どこで使われているか

電算写植機でセリフを打ち出している一部の漫画雑誌では今でも見れます。
あと私が住んでいるところは90年代はじめに建てられた施設などがあって、
そこで見れます。
多分今建つ建物だったら新ゴかヒラギノになるのでしょう。

※2015.10.07追記 -
「ゴナは今どこで使われているか」は良くない言い方だったと思いました。反省しています。
「自分で探さなきゃいけない」って思っています。
探せばたくさんあります。写研だいぶあります。自分のまわりにたくさんあります。
わたしはもっと探したいのでAmazonで探し始めました。

書体は排他利用しかできない

書体は一つ選んだら同時に違うもう一つを使うことができない、
すなわち、
新しい書体が一つ産まれる瞬間というのは
今までにあった書体が使われるチャンスを一つ駆逐した、
ということになるんだなと理解しました。

これは音楽も同じですね。
人は同時に複数の音楽を聴けない。
リスナーに対して「私の音楽を聴いてください」とお願いしたら、
それはすなわちその人に「他の音楽を聴く時間を削って私の音楽を聴いてください」
とお願いすることになる。
それに似てるなって思いました。

映画館で字幕が新ゴだったら嫌だなあ、
新ゴじゃない字幕も用意して同時に流してくれないかな、
なんて考えてもそれは不可能じゃないですか。そういうことです。

新ゴを愛してしまった人がいて、
わたしはそういう人が提供するものに対して我慢し続けていかなきゃいけないんだ、と理解しました。

ある程度は回避もできるかもしれませんが
回避できない場面も多いでしょう。
建物とか街とかゲームとかTVとか本とか教科書とか。
悔しいですが、本当に悔しいですが、そう覚悟して生きていくしかない。
できるかぎり目を逸らしながら、唇を噛みながら。

裁判があった

ゴナと新ゴはかつて裁判があったそうで、
写研がモリサワを相手どって、
新ゴはゴナを模倣したものであるとして提訴したけれど、認められなかったとのことです。

裁判結果について感想

悔しいですし納得いきません。

Wikipediaには、
1993年3月、写研は
モリサワの「新ゴシック体U」「新ゴシック体L」は
自社の「ゴナU」「ゴナM」の複製であるとして訴えを起こしている。
判決では「ゴシック体の範疇を抜けない範囲で制作されたものであるため、
ゴナと新ゴシック体が結果的に似てしまうことは避けられない」とし、請求を退けた。
とありますが、
ゴナは、詰めがいらないよう四角いっぱいを埋めて、
かつ丸みを帯びていて、でもゴシックであることも失われていない、
誰にでもできる仕事ではないゴシックだと、
誰が作っても結果的に似たものになるようなものではないと、そう思います。
漫画読んでるとずっとそう思うんです。

話がそれるんですが、
本来詰めが必要でベタ組みをするとすかすかになってしまうような書体を
ベタで組まれているのを見るのが、私はあまり好きじゃないです。
なので、ベタで組んでもすかすかにならないことが理想に置かれて作られている書体は
もうそれだけで本当にすばらしいと思います。
「ゴシック体の範疇を抜けない範囲」で「結果的に似てしまう」ものだなんて、納得がいきません。
誰が作っても簡単に、スカスカにならないゴシックを
何からの影響もなく結果的に似た作りになんてできますか?

http://www.station-s.co.jp/column/vol07.html
写研のフォントの場合、JISコードだけにととまらず、
1書体につき約2万字をデザインし、さらにファミリー化をするわけですから、
時間がかかるのもうなずけます。
しかも縦に組んでも横に組んでもバランスが取れている必要があり、
ベタ組みで組んだときにその美しさが最大限に発揮されるようにデザインされているそうです。



左右が狭くてすかすかになりやすい文字とか、
直線と曲線が何度も交差する文字とか、
たくさんあるわけですよ、日本語は。
それが、ちょっと丸っぽい要素を取り入れたゴシックを作れば
誰がデザインしても最終的にはゴナに似た結果に辿り着くのは当然…
…なんて、そんなわけがないと思います。
これは模倣しなきゃ辿り着かない結果だと私は思います。

おわりに

自分はいつか、自分が作る印刷物にゴナを使いたいです!
アウトラインサービスでもいいです。
まずその印刷物の元を作ることから始める必要があるのでまだまだなんですが、
いつか「これはゴナを使ってこその作品だ!」って思えるものを、絶対に作りたいです。
「ゴナっぽければ、似てるやつでいいや」じゃ駄目なんです。
そのためにたくさんゴナを見て、形を覚えられるよう、まず勉強したいです。

2014.6.29 追記:

TA風雅とかラムダとかMYシリーズとかTAシリーズとか、
OK・ドンキ・マックスバリュの値札で使われている書体などは、
新ゴ以上にゴナとの見分けが困難であるということを後日知りました。
何だこれ?と思うような曲線の極端な改変がされている部分を見ると見分けることができるようになりましたが、
まんま同じなのかなあと思う箇所も多く、
完全に見分けられる気がしないので、とても悲しい思いでいます。

2021.7.16 追記:

2021年5月、写研公式サイトがopen!
https://sha-ken.co.jp/
https://archive.sha-ken.co.jp/

モリサワとともにOpenTypeフォントを開発中という話を聞き、「私にとっては好きではないモリサワからリリースされるのか」という複雑な思いはありますが、何はともあれOpenTypeフォントリリース予定があるというのは嬉しいものです。
公式サイトもとても便利で、そうそう、これがずっとほしかったんだ!という思いです。
リリース楽しみですね!
posted at 2012.10.10